法人の不動産売却で節税可能?個人との税金の違いや節税対策を解説

市村 嘉男

筆者 市村 嘉男

神戸市北区に密着して50年。宅建士、1級ビルクリーニング技能士、ドローン操縦士という3つの専門視点から、建物の価値を多角的に見極めます。半世紀の歴史とプロ根性によるバイタリティで、お客様に「東洋技研に頼んで良かった」と言っていただけるよう、お客様の不動産課題に全力で並走いたします。

法人の不動産売却で節税可能?個人との税金の違いや節税対策を解説

税金・節税ガイド

経営者・不動産ご担当者の方へ

「自社ビルや遊休地の売却税額が分からない」と悩む経営者や担当者は少なくありません。

法人の不動産売却益は会社全体の損益に合算されるため、売却時期や決算内容で税負担が変わります。主な対策は、損失との相殺損金との時期調整買換え特例です。

この記事で分かること

  • 売却益=売却代金-帳簿価額-譲渡費用
  • 節税では、損失との相殺、損金計上時期の調整、買換え特例を検討できます。青色申告法人の一定の欠損金は原則10年間繰り越せます。
  • 3,000万円特別控除は法人に適用されず、建物の消費税と収益計上年度にも注意が必要です。

この記事のよくある質問

Q

法人と個人の違いは?

A

法人は売却益を本業と合算し、所有期間別税率や3,000万円特別控除はありません。

詳細は「法人の不動産売却にかかる税金」へ
Q

節税方法はある?

A

損失との相殺、損金との時期調整、買換え特例を検討できます。

詳細は「法人の不動産売却における節税方法」へ
Q

注意点は?

A

建物の消費税と収益計上年度を確認します。

詳細は「法人の不動産売却で節税する際の注意点」へ
01

課税のしくみ

法人の不動産売却に
かかる税金

法人の売却益は本業などの損益と合算されて課税所得を構成します。個人のような所有期間別の税率区分はなく、決算内容と売却時期で税負担が変わる点が要点です。

法人の不動産売却益は本業の損益と合算される

不動産売却益とは、売却代金から帳簿価額と売却に直接要した費用を差し引いた利益です。この売却益は本業などの損益と合算されるため、売却益だけでは納税額は確定しません。

【図】売却益の計算式

売却益 売却代金 帳簿価額 譲渡費用

法人は不動産の所有期間で法人税率が変わらない

個人は売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかにより長期・短期を判定しますが、法人には同じ区分がありません。課税方法や控除の有無にも違いがあります。

法人と個人における不動産売却の税金比較

比較項目 法人 個人
課税方法 会社全体の所得と合算 譲渡所得として区分
所有期間 税率区分なし 5年を境に短期・長期
税率 所得800万円を基準に段階的 所有期間で大きく変動
3,000万円控除 なし 居住用財産の特例あり
売却損 他の事業所得と相殺可 原則相殺できない
建物の消費税 原則、課税取引 事業者かどうかで異なる

法人が不動産売却で負担する主な税金

主な税金は次のとおりです。

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税
  • 防衛特別法人税

!防衛特別法人税は2026年4月1日以後に始まる事業年度から対象です。原則として一定の税額控除前の法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた金額に4%を乗じて計算します。税額が0円でも、対象法人は原則として申告が必要です。

法人税率の目安(資本金1億円以下など一定の普通法人の場合)

所得の範囲 税率
年800万円以下の部分 原則15%
年800万円以下の部分(所得が年10億円を超える事業年度) 17%
年800万円以下の部分(適用除外事業者) 19%
年800万円超の部分 原則23.2%

※通算法人などには例外があります。

【図】課税所得のイメージ

本業の利益1,000万円 売却益1,000万円 課税所得2,000万円
800万円までの部分原則15%
残り1,200万円の部分原則23.2%

法人税率の目安(グラフ)

※実効税率は資本金、所得額、所在地、法人区分で異なります。

02

3つのアプローチ

法人の不動産売却に
おける節税方法

売却益はそのまま課税されるわけではなく、工夫次第で課税所得を圧縮できます。方向性は「赤字を使う」「損金の時期を合わせる」「将来へ繰り延べる」の3つに整理できます。

課税所得を圧縮する
3つのアプローチ

すでにある赤字を使う

損失との相殺(欠損金・本業赤字と相殺)

今年度の支出を調整する

損金との調整(役員退職金・修繕費などを同年度に集約)

将来に繰り延べる

買換え特例(圧縮記帳で課税を将来へ先送り)

本業の赤字や繰越欠損金と売却益を相殺する

同じ年度の本業赤字は、売却益と相殺されます。たとえば本業で500万円の損失が出ている年に1,000万円の売却益が生じた場合、相殺後の課税所得は500万円に抑えられます

青色申告法人の一定の欠損金は原則10年間繰越可能ですが、中小法人等以外は原則として控除前所得の50%が限度です。残高と申告状況を税理士に確認してください。

損金が発生する事業年度に売却時期を合わせる

適正額の役員退職金、当期の損金となる修繕費、広告費などと売却益が同じ年度なら、課税所得を抑えられる可能性があります。

役員退職金には退職の事実、決議、金額の妥当性が必要です。設備取得費は原則減価償却し、価値を高める工事は資本的支出になる場合があります。

特定資産の買換え特例で課税を繰り延べる

特定資産の買換え特例とは、一定の事業用資産を売却して要件を満たす資産へ買い換えた場合、圧縮記帳で課税の一部を将来へ繰り延べる制度です。申告書への記載や明細書の添付が必要で、税金の免除ではありません

改正令和8年度税制改正により、法人の長期所有土地等に係る買換え特例は令和11年3月31日まで3年間延長されました。買換資産のうち、建物および附属設備は特定施設の用に供されるもの、構築物は特定施設に係る事業の遂行上必要なものに限定されました。

03

見落としに注意

法人の不動産売却で
節税する際の注意点

個人向けの特例を法人に当てはめない、建物と土地で消費税の扱いが違う、売却益の計上時期は原則引渡し日——この3点を契約前に確認することが失敗回避の要点です。

法人には3,000万円特別控除が適用されない

3,000万円特別控除とは、個人が一定の居住用財産を売った際、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。法人名義の不動産には適用されず、売却益が3,000万円以下でも法人税がかからないとは限りません。

土地の譲渡は非課税、建物部分は原則として課税取引

土地の譲渡は消費税の非課税取引ですが、建物部分の譲渡は原則として課税取引です。ただし実際の納税義務は、法人が課税事業者に該当するかなどによって異なります。一括売却では、時価や固定資産税評価額などの合理的な基準で代金を区分します。

納税額は課税事業者か、簡易課税や仕入税額控除の扱いで変わるため、法人税等と消費税の資金を分けて見積もります。

売却益の計上日は原則として引渡し日になる

売却収益は原則として引渡し日の属する事業年度へ計上します。土地・建物を契約の効力発生日で継続して計上している場合は認められることがありますが、自由には選べません

【図】売却前の税務チェックリスト

  • 01帳簿価額
  • 02当期損益
  • 03繰越欠損金
  • 04土地・建物の価格区分
  • 05消費税の納税義務
  • 06契約日と引渡し日
  • 07買換え予定

!税額や特例は税理士、査定価格や売却条件は不動産会社へ契約前に相談しましょう。

この記事のまとめ

まとめ

法人の売却益は会社全体の損益へ反映されます。

欠損金、損金の年度、買換え予定をまとめて確認します。

3,000万円特別控除・消費税・収益計上年度を個人売却と混同しないことが重要です。

売却条件は不動産会社、税額や特例は税理士へ早めに相談しましょう。

法人の不動産売却は、決算内容や投資計画を含む財務判断です。神戸市北区の査定や売却は、株式会社東洋技研へご相談ください。